人手不足が深刻化する中、自動化の検討を始めたもののさまざまな種類があり、特徴や違いがわからないと悩む担当者は少なくありません。自動倉庫は大きな投資です。スペック上の速さや保管効率、価格に目を奪われ、自社の現場に合わない種類を選んでしまうと、数年後の事業成長に対応できず「負の遺産」になるリスクもあります。本コラムでは、自動倉庫の種類と特徴を簡単に比較してご紹介いたします。1. 自動倉庫の基本自動倉庫には、ラックそのものが建物の構造体(柱や壁)を兼ねている「ビル式(建屋一体型)」か、既設の建物内に独立した設備として後付けでき、移転やレイアウト変更も容易な「ユニット式(自立型)」があります。事業環境の変化が激しい現代においては、柔軟性に優れたユニット式が主流となっています。 よりユーザー目線で重要なのは格納物による分類です。格納する荷物の単位によってパレット自動倉庫とケース自動倉庫の大きく2つの種類に分けられます。パレット自動倉庫:パレットに載った原料や重量物、大口の製品などの保管に適しています。ケース自動倉庫:段ボール箱やプラスチックコンテナ単位で、多品種少量の部品や商品を効率よく保管するのに適しています。自動倉庫のコンテナやトレーに段ボール箱をそのまま格納・入出庫したり、ピースやボール単位にばらしてコンテナに格納し、細かい単位でピッキングしたりと、出荷単位や運用により多様な使い方が存在します。昨今ではECなどのピースピックを想定したソリューションが増えています。2. 自動倉庫のタイプと一般的な特長自動倉庫にはさまざまなタイプが存在し、今もなお新しいソリューションが登場しています。以下では、主に多品種少量出荷の現場で採用される「ケース自動倉庫」の代表的な方式の一例をご紹介します。スタッカークレーン式(ミニロード型):上下・前後に動くクレーンが荷物を運びます。コスト、保管密度、能力のバランスが最も取れた「中庸」な方式です。シャトル型:各段を高速走行するシャトル台車が荷物を運びます。極めて高いスループット(処理能力)を誇りますが、設備構成が複雑で導入コストが高くなりやすい傾向があります。キューブストレージ型:コンテナを隙間なく積み上げ、上部のロボットが取り出す方式です。保管密度は非常に高いのですが、スループット(処理能力)を出すために大型化する傾向があります。そのため、初期投資は高めになる傾向があります。棚搬送AGV型:棚ごとロボットが作業者の元へ運びます。柔軟性が高い一方、高さ制限があるため保管効率には限界があります。方式処理能力(速さ)保管効率(密度)一般的な特徴スタッカークレーン式中(バランス型)中~高コスト・能力・保管密度のバランスが最も「中庸」。シャトル型極めて高い低高速だが、構造上デッドスペースが増え、導入費も高額。キューブストレージ型低~中極めて高い圧倒的な密度だが、一定以上の規模と初期投資が必要。棚搬送AGV型低〜中低柔軟性は高いが、床面積を多く使い、高層化には不向き。各方式のメリット・デメリットを補うため、国内外のマテハンメーカーがさまざまな製品を開発しており、こちらに挙げた方式以外も含めて日々新しいモデルが登場しています。3. 保管効率を左右する格納方式自動倉庫の「種類」を選ぶ際、装置の形式と合わせて重要になるのが、棚への格納方式です。主流はシングルディープ・ダブルディープですが、主に「シャトル式」や、特殊なフォークを持つ「スタッカークレーン」で採用されるマルチディープも存在します。シングルディープ(1列保管): 入出庫スピードを最優先する現場向け。ダブルディープ(2列保管): 「スピード」と「保管密度」のバランスが最も取れた方式です。通路面積を大幅に削りつつ、荷替えのロジックも複雑になりすぎないため、多くの現場で「最適解」として選ばれます。マルチディープ(3列以上のトリプル・クワトロ等): さらに奥深くまで詰め込む方式も存在します。驚異的な保管密度を実現しますが、奥の荷物を取り出すための「移動(荷替え)」に時間がかかるため、同じ商品が大量にある場合や、回転率の低い長期保管品に適した、かなり尖った仕様と言えます。4. トレードオフの現実自動倉庫を選定する際、最も重要な前提は「すべての項目で満点という、万能なソリューションは存在しない」という点です。自動化設備の性能は、常に処理能力や保管効率、コスト面においてトレードオフの関係にあります。例えば、圧倒的な処理能力を誇るシャトル式はスピードは抜群ですが、その分導入コストが高額化しやすく、保管密度が低くなる傾向があります。一方で、保管密度を極限まで高めたキューブストレージ型は、一定以上の処理能力を出そうとするとロボットの台数を増やす必要があり、初期投資が膨らみやすくなります。また、棚搬送型AGVなどはレイアウトの柔軟性が高いものの、スタッフが手作業でピッキングを行うことを前提とするため、棚の高さが一般的には2m程度に制限されます。そのため、天井高を活かした「面積あたりの保管効率」という点では、他の固定式ラックに軍配が上がります。5. スペックだけで決めない重要性先ほど挙げた自動倉庫のタイプとおおまかな特長を押さえておくと、どういったタイプを選ぶべきかの「当り付け」がしやすくなります。一方で、昨今見た目上似通ったソリューションが多く存在する中、検討現場では、処理能力・保管効率・コストといったわかりやすい数字だけで判断されがちです。しかし、どのタイプであれ本当に重要なのは、自動倉庫を活用し、どう現場を運用するかです。逆に言えば、導入後の運用から逆算し、必要な機能やシステム連携ができるかといった点がもっとも重要な判断基準となります。これから導入を検討されている方は、自社の業務の特性、取り扱う商品、そして数年後の事業計画等に照らし合わせ、保管量やコストなどのわかりやすい数字の比較だけでなく、自社のやりたいことが本当にできるのかを運用目線で考えることが、失敗しない選定の第一歩となります。