「自動倉庫を導入したのに、期待したほど生産性が上がらない」「頻繁にエラーで止まってしまう」―――人手不足解消のために大きな投資をしたにもかかわらず、稼働後にこのような悩みを抱える現場は少なくありません。実は、導入後のトラブルや生産性低下の9割は、自動倉庫=ハードウェアの故障ではなくデータ管理(WMS連携等)と運用プロセスの不適合が原因です。本コラムでは、高性能な自動倉庫システムの導入成否にかかわる3つのポイントと、それを突破するための運用ノウハウをわかりやすく解説します。1. 生産性が上がらない最大の原因は入庫不足自動倉庫の運用において、オーダーをまとめてピッキングするトータルピック(種まき方式)であれ、オーダーごとにピッキングするマルチオーダーピック(摘み取り方式)であれ、商品が庫内に十分に入庫されていなければ作業は始まりません。適切な在庫水準を保つことが絶対の大前提です。その上で、GTP(Goods to Person:荷物が人の元へ来る方式)の自動倉庫において特に生産性を左右するのが、マルチピッキングを採用する場合の庫内密度です。自動倉庫におけるマルチピッキングの効率化とは、搬送ロボットが運んできた1つのビン(コンテナ)から、一度に複数のオーダー用の商品をピッキングすることです。 コンテナ内の在庫(SKU)がスカスカな状態だと、搬送ロボットが一生懸命ビンを運んできても1つの商品しか取れないシングルピックのような状態になり、搬送ロボットの運搬能力を著しく無駄遣いしてしまいます。逆に、ビンに多種多様なSKUがギッシリ詰まっていれば、1回ビンが到着するだけで複数の商品を同時に処理(複数ヒット)できます。つまり、自動倉庫のスピードを上げるには、出庫(ピッキング)の前に「いかに庫内を高密度の状態(SKU充実)にしておくか」という入庫(補充)の運用が極めて重要になるのです。2. 在庫精度を下げるデータ不整合自動倉庫は、上位システムであるWMS(倉庫管理システム)からの指示で動きます。ここで恐ろしいのが、WMS上は「在庫あり」となっているのに、自動倉庫内には「実在庫がない」、もしくはその逆の在庫データの乖離です。例えば、入荷予定データと実際の入庫データが異なった際に現場の作業員が「とりあえず手修正して流す」というアナログな対応をしてしまい、WMSのデータを更新しないケースがよくあります。すると、欠品が発生してオペレーションが非効率になる、またその際に計画外の緊急入出庫をすることでさらに在庫がずれるという負のスパイラルに陥ることが考えられます。在庫データの不整合により在庫精度がどんどん下がってしまうため、事前のオペレーション設計や自動倉庫の在庫数をWMSに反映するような機能を設ける、データ連携設計が必要です。3. 現場を混乱させる「荷合わせ」のパンク長尺物や特殊な形状の商品など、自動倉庫に入らない商品がある場合、1つの注文に対して自動倉庫から出てくる商品と平置き棚から人が取ってくる商品を合流(荷合わせ)させる必要があります。例えばWMSに双方が揃うまで待機させる、どのタイミングで合流させるか、という高度な指示機能がない場合、現場の作業員が目視で伝票を見比べながら、アナログな仮置き場で荷合わせをすることになります。これでは出荷量が増えた瞬間にスペースがパンクし、誤出荷のリスクも跳ね上がります。自動倉庫を導入する際は、庫外作業との連携を見据え、WMS等のシステム上で適切にバッファ(一時待機)を管理できる機能や、オーダー順を揃えて出庫できるWESといった制御基盤の有無を確認することが重要です。4. 成功を決定づける3つのポイント自動倉庫は導入して終わりではなく、その後の運用ルールによって投資対効果(ROI)が劇的に変わります。システムの整備と並行して、下記3つの運用ルールを徹底しましょう。①入庫優先: 空き時間に随時入庫する、という運用は入庫作業の非効率につながりかねません。朝一番など時間を決めて効率的に集中入庫を行い、マルチピッキングを生み出す高密度な状態を意図的に作ります。「チャージ&リリース」のサイクルを作る:物流現場には必ず「波」があります。午前中に一気に在庫を詰め込む「チャージ(入庫)」を行い、午後の出荷ピークに向けて「リリース(出庫)」に専念する。このようにスケジュールを明確に分離することで、ロボットの無駄な動きを減らし、搬送効率を最大化できます。②在庫集約: 可能な限り在庫を自動倉庫内へ寄せ切り、庫外ピッキングとの荷合わせ作業自体を極力減らします。格納アイテムの定期的な見直し:事前に設計した通りの出荷頻度のアイテムが可能な限りすべて自動倉庫内に集約されているか定期的に確認しましょう。在庫が自動倉庫と手ピッキングエリアに分散すると、1つのオーダーを完了させるために2箇所で作業が発生し、梱包時の荷合わせの手間が倍増します。例外エリアを最小化する:「これは重いから外」「これは形が特殊だから外」と安易に例外を作ると、結局は人の手に頼るエリアが広がり、自動化の恩恵が薄れます。可能な限り自動倉庫の対応サイズに荷姿を合わせる(外装の標準化)など、システムに在庫を寄せる努力が全体の最適化に直結します。③例外対応の禁止: 在庫のズレが生じたら即座に同期し、システムを介さない現場のローカルルール・手修正を禁じます。緊急入出庫の禁止:入庫不足やオペレーション設計の不足に伴い、緊急入出庫を現場判断で行うことは、在庫差異が起こりやすいので危険です。SOP(標準作業手順)の徹底とデジタル管理:緊急対応、例外を許さないためには、誰が作業しても同じ結果になる標準手順の徹底が不可欠です。在庫差異を見つけたらその場でシステムを修正し、リアルタイムでデジタル上の在庫と実在庫の一致を維持し続けるといった事前のオペレーション設計や、リカバリーできるようなデータ設計を検討しましょう。この規律こそが、10年、20年先まで自動倉庫を安定稼働続けるための最も安価で効果的なメンテナンスとなります。5.まとめ自動倉庫は、ハードウェアを設置しただけで稼働する魔法の箱ではありません。ロボットの効率を最大化する入庫優先の運用と、それを支える正確なデータ連携の両輪が噛み合って初めて、自動化と生産性向上が実現します。株式会社ROMSが提供する、バラピック対応・100㎡からスモールスタート可能な自動倉庫システムは、ハードウェアや自動倉庫を動かすWCS(倉庫制御システム)だけでなく、現場の運用を最適化するWES(倉庫運用システム)も併せてご提供が可能です。ROMSのWESでは、管理者が自動倉庫の稼働状況や実在庫をリアルタイムに確認する機能を標準で提供しています。さらに、既存のWMS側で不足している機能をカスタムで柔軟に補完することで、各社の現場に沿った効率的な運用方針の確立と、データ不整合の解消に繋げることができます。自動倉庫の導入が初めての企業様や、スモールスタートできる自動倉庫をお探しの際は、ぜひお気軽にご相談ください。