セッション1|構内物流自動化への転換点「業務再設計とシステム管理の重要性」澤田:本日はよろしくお願いいたします。セイノー情報サービスは、セイノーグループのなかで、主にシステム領域を担う会社です。情報システムの提供(ロジスティクスITサービス)に加え、自社システムを活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、いわゆる物流業務の受託サービスも展開しています。ロジスティクスITサービス・アウトソーシングサービスを合わせた売上高のうち、グループ外のお客様の売上高が61%を占めており、セイノーグループで培ってきたノウハウを活かしながら、多くのお客様にサービスの提供を行っています。「LLP(リードロジスティクスプロバイダー)」を事業コンセプトに掲げ、導入前のコンサルから、ロジスティクスITサービス、アウトソーシングサービスの提供、さらに稼働後の改善まで、AtoZでお客様の物流をリードしていきたいと考えています。弊社のシステムの提供範囲は広く、次の図のようにサプライチェーンの流れに対して戦略から実際の現場の運用管理まで、さまざまなソリューションを提供しています。今回のウェビナーで主にご紹介するのは、物流センターや生産ラインでロボットを管理・制御する「RMS(ロボットマネジメントシステム)」で、一般的にはWESと呼ばれるものです。 あわせて、RMSに指示を与える上位システムとして、WMSや生産管理システムについてもご紹介していきます。構内物流自動化の実態と課題製造業では、これまで効率よくたくさんの製品を生産するための「生産設備の投資」が優先されてきました。一方で、生産能力が高まるにつれて「構内物流の遅れ」が、現場全体の制約になるケースも出てきています。たとえば、生産設備の稼働率が高くなっても、部品の供給や完成品の出荷といった「構内物流」が滞ると、導入した設備を十分に活かしきれなくなります。製造業における投資対効果を最大化するには、生産設備だけでなく、その前後を支える構内物流のボトルネックを解消しておくことが重要です。人手不足とロボット活用の必要性2024年問題は、どちらかというとドライバーなど物流業界における人手不足が問題のメインテーマでした。しかし2030年になると、人口構造そのものに起因する労働力不足が深刻化する見通しです。こうした背景から、物流ロボティクス市場は2030年には現在の約3倍に拡大するとの推計もあり、ロボット活用へのニーズは今後さらに高まっていくと見込まれます。ロボット導入によって期待できる効果は、大きく2つあります。1つ目は、省人化・省力化を図れることです。これまで人が担っていた作業をロボットで代替することで、生産などのコア業務に人員を割けるようになります。2つ目は、作業の平準化です。今後ますます人手不足が進むと、スポット人材などもフル活用する必要性が出てきますが、ロボットやシステムで作業を支援することで、作業者の熟練度に左右されず、一定の品質で作業がしやすい環境をつくることができます。構内物流の自動化が進まない背景実態として、構内物流の自動化は進んでいるのでしょうか。弊社が実施したアンケートでは、製造業の回答者157名のうち、約65%が「ロボットを未導入で導入の予定がない」と回答しました。その背景には、いくつかのハードルがあります。まず挙げられるのが、「経営・投資の壁」です。製造業では生産設備の投資配分が大きく、構内物流は投資対効果が見えにくい領域として後回しになりがちです。そのため、社内で稟議を通すには、その設備導入によりどのような効果が得られるかを明確に示す必要があります。そうした効果の提示に向けて大きな壁となりうるのが「現場・業務の壁」です。具体的には以下のような課題です。機器選定の壁:機器が自社に最適なのかどうか、選定が難しい。検討負荷:ロボット・システム領域のベンダーなど、慣れない領域の関係者とやり取りし、社内を取りまとめるのは大きな負荷。部分最適:ロボットを一部工程だけ導入した結果、前後工程など他の手間が増えてしまえば、全体として導入効果は薄れてしまう可能性がある。さらに「データ・システムの壁」もあります。基盤の未整備:生産設備工程に管理システムを導入していても、原材料や完成品の管理までは十分にシステム化されておらず、ロボットへの指示データがない。システムの分断:将来的に自動化の範囲を広げる場合、業務システムとの連携が出来ていないと、手動での自動化機器の操作が必要となる。これらの壁を乗り越え、自動化を成功に導くためには「業務設計のスキル」と「システム基盤の整備」、この2つを両立させることが重要です。「現場・業務の壁」を突破するここからは、先ほど挙げた課題のうち「現場・業務の壁」をどう解決していけばよいかをお話しします。 まず機器選定において重要なのは、検討の際に「どのロボットを入れるか」を先に考えるのではなく「何を解決したいのか」から考えることです。 たとえば、「今後の生産増に対応するための保管スペースが足りない」「建物の上部空間を活用できていない」「自動化して人の歩行時間を削減したい」といったように、現状と課題を分析し、そこに応えられる機器やシステムを選定することが重要です。 続いて、検討負荷を軽減する方法のひとつが、「トータルコーディネートによるベンダー窓口の一本化」です。 お客様が主導してプロジェクトを進める場合、ロボットメーカーやシステムベンダーなど、複数の関係者と個別にやり取りする必要があります。その際、ロボットをどのように動かすのか、障害が発生した際にどこまでをだれが対応するのかなど、調整や判断が複雑になりやすい点が課題です。 これに対し、セイノー情報サービスがトータルコーディネートの立場で間に入ることで、システムとロボットをどのように連携させ、業務に組み込んでいくとよいかを整理できます。ベンダー間の調整を含めて窓口を一本化することで、お客様側の検討負荷を抑えながら、自動化プロジェクトを進めやすくなります。さらに、部分最適を避けるためには、前後工程を含めた全体最適の視点が欠かせません。例えば一部の工程だけを自動化した結果、前後の準備や後処理の手間が増えたといった話を聞くことがあります。こうしたロボット導入でよくある落とし穴を防ぐには、業務全体を理解し、自動化する領域以外にも踏み込めるベンダーと一緒に進めることが重要です。セイノー情報サービスでは、BPR(Business Process Reengineering)、いわゆる業務再設計の考え方を重視しています。人がどこまでやり、ロボットにどの範囲を任せるのかを明確にすることで、自動化の効果を高めることができます。下の図では、生産に関する様々な工程があるなかで赤い点線部分が構内物流を表しています。例えば業務再設計の際には、モノが入ってから出ていくまでのプロセス全体を見直し、人とロボットの役割分担を整理していきます。そうすることで、作業者は生産のコア業務に集中することができ、構内のボトルネックを解消することができます。「データ・システムの壁」を解消する続いて、「データ・システムの壁」を解消するための考え方です。まず前提として、倉庫内の在庫や作業管理を担う「WMS」というシステムがあります。ここで作られる入庫や出庫などの指示データは、人だけでなくロボットを動かすためにも必要な情報になります。セイノー情報サービスのWMS『SLIMS』は、モノが入って出るまでの各フェーズで、ロボットとの連携が可能です。ロボットに指示を出し、作業実績を受け取り、それを上位システムなどとも紐づけることができます。また、倉庫業だけでなく、生産前の原材料や部品倉庫など、製造業のお客様にも幅広く導入実績があります。 さらに私たちは原材料・完成品の在庫管理を行う実行系モジュール、生産・調達計画の立案が行える計画系モジュールを併せ持った生産管理システム『SPENCER』も提供しています。そしてWESである『RMS』がWMSや生産管理システムといった業務システムとロボットとの連携基盤の整備を担います。WESは、WMSや生産管理システムから受け取った指示を、最適なロボット・設備に、どういう順番で、どんな形のデータレイアウトで送るかを制御する役割を担います。例えばWMSから、人、フォークリフト、自動倉庫などそれぞれに出庫・搬送の指示を出す場合、このWESがないと人手によるデータ加工などが必要になることがあります。これに対し、WESを導入することで、指示データを最適な形に整えて適切に振り分けるため、作業の手間を軽減できます。自動倉庫などの物流ロボットを導入すると、デッドスペースの活用や生産性の向上が期待できます。ただしその効果を十分に引き出すためには、ロボット単体だけでなく、WMSや生産管理システム、WESといったシステム基盤を整備していく必要があると理解していただけるとよいかと思います。セッション2|ROMSが提案する、製造業向け自動倉庫の活用勝藤:澤田さん、ありがとうございました。ここからは我々ROMSから、製造業のお客様に対して、自動化ソリューションをどのようにご活用していただけるのかをご説明します。簡単に会社紹介をしますと、先ほどのセイノー情報サービスさんが上位システムを担う会社であるのに対し、我々はその上位システムからの指示を受けて動く、自動倉庫などの下位システムを扱っている会社です。ROMSは2019年に創業した日本のマテハンメーカーで、自社でプロダクトの企画・設計・開発を行っています。製造現場は大きく分けると3つのエリアで構成されていると思います。部品の保管エリアがあり、アッセンブリラインなどの製造・組み立てエリア、そして完成品を保管するエリアです。先ほどの澤田さんのお話にもありましたが、このうち真ん中の製造・組み立てエリアは、比較的自動化が進んでいます。というのも、製造コストは製品価格に直結しやすいため、多くの企業が課題意識を持って、自動化・効率化に取り組んできた領域だと思います。一方で、その前後にあたる部品の保管エリアや完成品の保管エリアでは、まだまだ自動化が進んでいないのが実態かと思います。ROMSでは、こうした領域にも最適なソリューションがあれば、十分に自動化の余地があると考えています。実際に保管エリアについてお客様にお話を伺うと、「中軽量棚に在庫を積んでいるけれど、天井空間を有効活用できていない」「品種、品番ともにたくさんの部品があり、ロケーション管理が難しい」「ロケーション管理を十分できていないことが原因で、ピッキングミスが発生してしまう」といった声をよく聞きます。これらの課題に対して、自動倉庫は有効な解決策となります。高さ方向を活かして在庫を高密度に保管でき、多品種・多品目であってもシステムでリアルタイムに在庫を管理できます。さらに、作業者がリストを持って部品を探しに行くのではなく、必要なものが作業者のもとに運ばれてくる「Goods-to-Person」の仕組みにより、歩行や探索の手間を減らし、ヒューマンエラーの削減にもつなげることができます。自動倉庫「ナノ・ストリーム」の特長なかでもROMSの自動倉庫「ナノ・ストリーム」は、大きく4つの特長があります。スモールスタート一般的な自動倉庫のなかには、500㎡以上の設置スペースが必要となるものもあります。一方、ナノ・ストリームは100㎡から設置可能で、コンパクトに導入できる点が特徴です。 そのため、初めての自動化に取り組む企業が「まずは小規模に導入してみたい」という場合にも適しています。サイズが小さいので、既存工場などへ導入する際も、現在のオペレーションを極力止めずに搬入しやすい設備です。高密度保管ナノ・ストリームは、天井高を活かして在庫を保管できます。標準仕様では高さ6mまで積み上げることができ、従来の中軽量棚では活かしきれていなかった上部空間を有効活用できます。 ラックはダブルディープという方式を採用していて、前後2列にコンテナを配置しています。そのため限られた床面積のなかでも高密度な保管が可能で、従来の中軽量棚と比べて2~3倍の保管を実現します。高効率搬送ナノ・ストリームは、ラックやクレーン、AGVなど複数の機器を組み合わせて構成しています。ROMSではこれらのハードウェアに加えて、各機器の動きを制御するソフトウェアも自社で開発しています。 ハードとソフトを一体で設計しているため、限られたスペースの中でも複数の機器をシームレスに連動させることができ、高効率な搬送を実現しています。作業生産性を4~6倍ほどに高めることが可能です。拡張性まずは小さく導入し、運用が軌道に乗ってきた段階で機器を追加したり、設備そのものを拡張したりしやすい自動倉庫です。 自動化設備は、一度導入すると簡単には変更できないものも少なくありません。しかし実際には、運用してみて初めて「作業ステーションは別の場所に置いたほうが良かったな」「1階に設置したけれど、別の階に移したい」といったご要望が出てくることがあります。 ナノ・ストリームは、そうした導入後のレイアウト変更や設備の移設にも対応しやすい、柔軟性の高い設備です。日本品質・短納期導入・柔軟対応ナノ・ストリームは日本国内で設計・開発されている国産の自動倉庫です。ここでは、ナノ・ストリームを語るうえで欠かせない3つのポイントを紹介します。日本品質JIS基準に即した設計を行っています。地震の多い日本での使用を考慮し、標準で震度5強までの耐震設計としている点も特長です。※カスタムにより震度6まで対応。短納期導入部品の多くに汎用品を活用しているため、短納期での導入にも対応しやすい設計となっています。設置条件にもよりますが、標準仕様であれば4~6カ月での導入が可能です。 昨今では、国や自治体が設備投資に関する補助金を用意するケースも増えています。ただ、補助金は申請期間や事業実行期間が短いケースも少なくありません。短納期で導入できる設備であれば、こうしたタイトなスケジュールにも対応しやすくなります。柔軟対応現場で扱う製品や部品、荷姿は多種多様です。ナノ・ストリームはさまざまな荷姿や運用に幅広く対応できるよう、柔軟性を持たせた設計となっています。汎用品活用による、メンテナンス性とBCP対策自動倉庫を選定する際、多くの企業が重視するのは、設備のスペックや導入費用、安全性などだと思います。ただ、自動倉庫は導入して終わりではありません。保守メンテナンスをしながら10年、20年と長く使い続けていただく設備です。そのため、導入後のメンテナンス性や、何かあったときの復旧力、いわゆるレジリエンスも非常に重要な選定ポイントになります。お客様とお話しするなかでも、「自動倉庫は維持費が高い」「以前導入した自動倉庫が古くなり、修理できないまま置かれている」といった声を聞くことがあります。 こうした課題に対応するためにも、ナノ・ストリームはメンテナンスパーツの約8割に汎用品を採用しています。クレーンやAGVなど複雑な機器を扱いながらも、その内部で使われるセンサー、モーター、減速機などには、一般的なECサイトでも調達しやすい部品を多く使用しています。専用部品に依存していると、部品交換が必要になった際に入手まで時間がかかり、設備の停止期間が長くなってしまう可能性があります。また、専用部品だと値段も高くついてしまう。一方、汎用品であれば入手しやすく、コストも抑えやすいだけでなく、多くの現場で使われていることから品質が安定している点もメリットです。このように、汎用品を活用した設計はメンテナンス性の向上だけでなく、設備を止めないためのBCP対策にもつながります。導入後も長く使い続けるためのサポート体制最後にサポート体制を紹介します。ナノ・ストリームを導入していただいたお客様には、保守メンテナンス契約に基づくサポートを提供しています。具体的には、稼働状況のリモート監視、オンコール対応や必要に応じた現場対応、年に1~2回の定期点検などを通じて、設備を長く安定して使い続けられるよう支援をしています。今後、製造現場における自動化はさらに進んでいくと思います。その際、現場に最も近いところにあるのが、我々が提供する自動倉庫のような下位システムです。一方で、自動化設備をうまく使いこなすためには、上位システムの整備も欠かせません。先ほどの澤田さんのお話にもあったように、生産管理システムやWMSなどを含め、業務をどう設計し、どのシステムと連携させるかを整理したうえで、設備導入を進めることが重要です。ぜひセイノー情報サービス様などにもご相談しながら、自社に合った自動化の進め方を検討していただけたらと思います。